《わか》だんなは、バルブレンさんがあれほど言っていなすったご当人だとよ」
「でもバルブレンにぼくのうちのことをあなたに話しませんでしたか」とわたしはたずねた。
「それは聞きましたよ――百度もね。なんでもたいへん、お金持ちのうちだそうですねえ、若《わか》だんな」
「それでどこに住んでいるのです。名前はなんというのです」
「それについてはバルブレンさんは、なにも話をしませんでしたよ。あの人はきみょうな人でしたよ。あの人は自分一人でお礼を残《のこ》らずもらうつもりでいたのですよ」
「なにか書き物を置《お》いては行きませんでしたか」
「いいえ、ただあの人がシャヴァノン村から来たということを書いたものだけです。その紙でも見つけなかったら、あの人のおかみさんの所へ死んだ知らせを出すこともできないところでしたよ」
「まあ、あなたは知らせてやりましたか」
「むろん、どうしてさ」
わたしはこのばあさんから、なにも知ることができなかった。わたしはしょんぼり戸口のほうへ向かった。
「おまえさん、どこへ行きなさる」とかの女はたずねた。
「友だちの所へ帰ります」
「ははあ、お友だちがありますか。それはパリにい
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