飢《う》えのために死んでいたかもしれなかった。なるほどあの男はわたしをバルブレンのおっかあの手からはなして、よその人の手に売りわたしたにはちがいなかった。でもあのときはあの人もわたしに対してべつに愛情《あいじょう》もなかったし、たぶんお金のためにいやいやそれをしたのかしれなかった。とにかくわたしが両親を見つけるまでになったのは、あの人のおかげであった。だからもう、あの人に対してけっして悪意を持ってはならないはずであった。
 わたしはまもなくオテル・デュ・カンタルに着いた、オテル(旅館)というのは名ばかりのひどい木賃宿《きちんやど》であった。
「バルブレンという人に会いたいのです。シャヴァノン村から来た人です」とわたしは写字机《しゃじづくえ》に向かっていたきたならしいばあさんに向かって言った。かの女は、ひどいつんぼで、いま言ったことをもう一度くり返してくれと言った。
「バルブレンという人を知っていますか」とわたしはどなった。
 そうするとかの女は大あわてにあわてて両手を空へ上げた。その勢《いきお》いがえらかったので、ひざに乗っかっていたねこが、びっくりしてとび下りた。
「おやおや、おやお
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