すことができた。
「つなを持っていてくれたまえ」とわたしはマチアに言った。
 一とびでわたしはこしかけの上に乗った。谷の中の景色《けしき》にはなにも変《か》わったものはなかった。それはそっくり同じに見えた。けむりまで同じようにえんとつから上がっていた。そのけむりがわたしたちのほうへなびいて来ると、かしの葉のにおいがすっと鼻をかすめたように思われた。
 わたしはこしかけからとび下りて、マチアをだきしめた。カピがわたしにとびついて来た。わたしは二人をいっしょにして、固《かた》く固くしめつけた。
「さあ、こうなれば少しでも早く行こうよ」とわたしはさけんだ。
「情《なさ》けないことだなあ」とマチアがため息をついた。「このけものさえ音楽が好《す》きなら、どんなにもどうどうと、凱旋《がいせん》の曲を奏《そう》しながらはいって行けるのだけれど」
 わたしたちが往来《おうらい》の曲がり角まで行くと、バルブレンのおっかあが小屋から出て来て、村の往来の方角へ向かって行くのを見つけた。どうしよう。わたしたちはかの女にいきなり不意討《ふいう》ちを食わせるくわだてをしていた。わたしたちはなにかほかのしかたを考え
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