っき》をしょったが、まだ牛はやめなかった。
「ぼくは牛のためにコルネをふいてやる」と、じっとしていられないマチアが言った。「ガッソーの曲馬には、音楽の好《す》きな雌牛《めうし》がいたよ」
かれはゆかいなマーチをふき始めた。
初《はじ》めの音で、雌牛は頭を上げた。するととつぜんわたしがかれの角にとびかかってつなをおさえるまもないうちに、かの女はとっとっとかけ出した。わたしたちはいっしょうけんめい、止まれ、止まれと呼《よ》びながら、あとから追っかけた。わたしはカピに牛を止めるように声をかけた。だがだれでも万能《ばんのう》ということはできない。牛飼《うしか》い、馬飼いの犬なら鼻づらにとびついたであろうが、カピは牛の足にとびついた。
牛はとうとうわたしたちが通って来た最後《さいご》の村までかけもどった。道はまっすぐであったから、遠方でもその姿《すがた》を見ることができた。おおぜいの人が通り道をふさいでつかまえようとしているのも見えた。わたしたちは牛を見失《みうしな》う気づかいはないと思ったので、すこし速力《そくりょく》をゆるめた。こうなるとしなければならないことは、牛を止めてくれた人たち
前へ
次へ
全326ページ中175ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
マロ エクトール・アンリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング