いろんな形をしていた。太ったのもあれば、やせたのもあり、子牛を連《つ》れたのもあった。馬もいたし、大きな太ったぶたは地べたに穴《あな》をほっていた。小さなぽちゃぽちゃした赤んぼうのぶたは、いまにも生きながら皮をはがれでもするようにぶうぶう鳴いていた。
 でもわたしたちは雌牛《めうし》よりほかには目にははいらなかった。それはみんな落ち着いて、おとなしく草を食べていた。かれらはまぶたをばちばち動かすだけで、わたしたちがしつっこく検査《けんさ》するままに任《まか》せていた。一時間もかかって調べたのち、わたしたちは十七頭気にいったのを見つけた。その一つ一つにちがった特質《とくしつ》があった。色の赤いのもあったし、白いのもあった。もちろんそんなことがいちいちマチアとわたしとの間に議論《ぎろん》をひき起こした。やがて獣医《じゅうい》がやって来た。わたしたちは好《す》きな雌牛《めうし》をかれに見せた。
「ぼくはこれがいいと思います」とマチアは白い雌牛を指さしながら言った。
「ぼくはあのほうがいいと思います」とわたしは赤い雌牛を指さして言った。
 獣医《じゅうい》はしかしその両方の前を知らん顔で通り過
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