たしたちはそこで、どのくらい金を持っているか、それをどうしてもうけたかということ、それからわたしが子どものとき世話になったシャヴァノン村のバルブレンのおっかあにおくり物をしておどろかせるつもりだということを話した。かれはするとひじょうに親切らしい熱心《ねっしん》を顔に見せて、あした七時に市場へ行って会おうとやくそくした。それでお礼はと言って聞くと、かれはまるっきりそんな物を受け取ることをこばんだ。そして笑いながらわたしたちを送り出して、その時間にはきっと市場へ行くようにと言った。
 そのあくる日夜明けから町はごたごたにぎわっていた。わたしたちのとまっている部屋《へや》から、馬車や荷車が下の往来《おうらい》のごろごろした石の上をきしって行くのが聞こえた。雌牛《めうし》はうなるし、ひつじは鳴く。百姓《ひゃくしょう》は家畜《かちく》にどなりつけたり、てんでんにじょうだんを言い合ったりしていた。
 わたしたちはいきなり頭から着物をひっかぶって、六時には市場に着いた。獣医《じゅうい》が来るまえに、選《よ》り取っておこうと思ったからである。
 なんという美しい雌牛《めうし》であろう……いろんな色、
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