ることはないと言った。なぜなら売り手といよいよ相談《そうだん》を始めるまえに、ありったけの力で雌牛《めうし》のしっぽに一つずつぶら下がってみればわかるのだからと言った。でもそれがほんとうのしっぽであったら、きっとおなかか頭をうんとひどくけとばされるだろうと言うと、かれの空想《くうそう》はすこしよろめいた。
ユッセルに着いたのは五、六年ぶりであった。あれはヴィタリス親方といっしょで、ここで初《はじ》めてくぎで止めたくつを買ってくれたのであった。ああ、そのときここから出かけた六人のうち、残《のこ》っているのは、たったカピとわたしだけであった。
わたしたちは町に着いて、あのときヴィタリスや犬ととまったことのある宿屋《やどや》に荷物を預《あず》けて、すぐ獣医《じゅうい》を探《さが》し始めた。やがて一人見つけたが、その人は、わたしたちが欲《ほ》しいという雌牛《めうし》の様子を話して、いっしょに行って買ってくれるようにと言うと、それをひどくおもしろいことに思ったらしかった。
「でもぜんたいおまえたち子ども二人で、雌牛《めうし》をなんにするのだね。お金は持っているのかい」とかれはたずねた。
わ
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