いた「ほんとうの音楽の先生」を見つけたので、うれしがってこおどりしていた。
 つぎの朝、わたしたちは――マチアはヴァイオリン、わたしはハープと、てんでんの楽器《がっき》を持って、エピナッソー先生を訪《たず》ねて行くことにした。わたしたちはそういう有名な人を訪《たず》ねるのに犬を連《つ》れて行く法《ほう》はないと思ったから、カピは置《お》いて行くことにして、宿屋《やどや》の馬小屋につないでおいた。
 さて宿屋のおかみさんが、先生の住まいだと教えてくれたうちの前へ来たとき、わたしたちは、おやこれはまちがったと思った。なぜなら、そのうちの前には小さな真《しん》ちゅうの看板《かんばん》が二|枚《まい》ぶら下がっていて、それがどうしたって音楽の先生の看板ではなかった。そのうちはどう見ても床屋《とこや》の店のていさいであった。わたしたちは通りかかった一人の人に向かって、エピナッソー先生のうちを教えてくださいとたのんだ。
「それそこだよ」とその男は言って、床屋の店を指さした。
 だがつまり先生が床屋《とこや》と同居《どうきょ》していないはずもなかった。わたしたちは中へはいった。店ははっきり二つに仕切
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