を迷わなかった。後ろの声がだんだん遠くなると、上のポンプの音が高くなった。わたしはぐんぐん進んで行った。ありがたい、もうまもなく日の光が見えるのだ。
 坑道《こうどう》のまん中をまっすぐに行きながら、わたしはレールにさわるために、右のほうへ曲がらなければならなかった。すこし行ってから、また水をくぐって、レールにさわりに行った。そこにはレールがなかった。坑道の右左と行ったが、やはりレールはなかった……。
 わたしは道をまちがえたのだ。
 仲間《なかま》の声はかすかなつぶやきのように聞こえていた。わたしは深い息を吸《す》いこんで、またとびこんだが、やはり成功《せいこう》しなかった。レールはなかった。
 わたしはちがった層《そう》にはいったのだ。知らないうちわたしは後もどりしたにちがいない。でもみんな呼《よ》ばなくなったのはどうしたのだろう。呼んでいるのかもしれないが、わたしには聞こえなかった。この冷《つめ》たい、まっ暗な水の中で、どちらへどう向いていいか、わたしは迷《まよ》った。
 するととつぜんまた声が聞こえた。わたしはやっとどちらの道を曲がっていいかわかった。後へ十二ほどぬき手を切って
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