、わたしは右のほうへ曲がった。それから左へ曲がったが、かべだけしか見つからなかった。レールはどこだろう。わたしが正しい層《そう》へ出ていることは確《たし》かであった。
そのときふとわたしは、レールが津波《つなみ》のために持って行かれたことを確かめた。わたしはもう道しるべがなくなった。そういうわけでは、わたしのくわだてをとげるわけにはゆかない。
わたしはいやでも引っ返さなければならなかった。
わたしは急いで声をあてに避難所《ひなんじょ》のほうへ泳ぎ帰った。だんだん近づくと、仲間《なかま》の声が先《せん》よりもずっとしっかりして、力がはいっているように思われた。わたしはすぐ竪坑《たてこう》の入口に着いた。わたしはすぐ声をかけた。
「帰っておいで、帰っておいで」と「先生」がさけんだ。
「道がわからなかった」とわたしはさけんだ。
「かまわないよ。もうトンネルができかけている。みんなこちらの声を聞いた。こちらでも向こうの声が聞こえる。じきに話ができるだろう」
わたしはすぐとおかに上がって耳を立てた。つるはしの音と、救助《きゅうじょ》のために働《はたら》いている人たちの呼《よ》び声がかすか
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