》した。そしててんでんがその紙に署名《しょめい》をした。わたしは犬とハープをマチアにやることにした。アルキシーにはリーズの所へ行って、わたしの代わりにかの女にキッスをしてチョッキのかくしにはいっている干《ひ》からびたばらの花を送ってもらいたいという希望《きぼう》を書いた。ああ、なつかしいリーズ……。
しばらくしてわたしはまた土手をすべり下りた。すると水が著《いちじる》しく減《へ》っているのを見た。わたしは急いで仲間《なかま》の所へかけもどって、もうはしご段《だん》の所まで泳いで行けること、それから救助《きゅうじょ》に来た人たちにどの方角ににげていいか聞くことができると告《つ》げた。「先生」はわたしの行くことを止めた。けれどわたしは言い張《は》った。
「行っといで、ルミ。おれの時計をやるぞ」とガスパールおじさんがさけんだ。
「先生」はしばらく考えて、わたしの手を取った。
「まあおまえの考えどおりやってごらん」とかれは言った。「おまえは勇気《ゆうき》がある。わたしはおまえができそうもないことをやりかけているとは思うが、そのできそうもないことが案外《あんがい》成功《せいこう》することは、
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