た。それを見るとみんな笑《わら》いだして、うれしがってときの声を上げた。
じょうだんや、嘲笑《ちょうしょう》のささやきがそこここに起こった。
「どうもりこうな犬じゃないか。あいつは金を持っている人といない人を知っている」
「そら、ここに手をかけた」
「出すだろうよ」
「出すもんか」
「おじさんから遺産《いさん》をもらったくせに、けちな男だなあ」
さてとうとう銀貨《ぎんか》が一|枚《まい》おく深《ふか》いかくしの中からほり出されて、ぼんの中にはいることになった。そのあいだ親方は一|言《ごん》もものは言わずに、カピのぼんを目で見送りながら、おもしろそうにヴァイオリンをひいた。まもなくカピが得意《とくい》らしくぼんにいっぱいお金を入れて帰って来た。
いよいよ芝居《しばい》の始まりである。
「さてだんなさまがたおよびおくさまがたに申し上げます」
親方は、片手《かたて》に弓《ゆみ》、片手にヴァイオリンを持って、身ぶりをしながら口上《こうじょう》を述《の》べだした。
「これより『ジョリクール氏《し》の家来。一名とんだあほうの取りちがえ』と題しまするゆかいな喜劇《きげき》をごらんにいれたてま
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