つります。わたくしほどの芸人《げいにん》が、手前みそに狂言《きょうげん》の功能《こうのう》をならべたり、一座《いちざ》の役者のちょうちん持ちをして、自分から品《ひん》を下げるようなことはいたしませぬ。ただ一|言《ごん》申しますることは、どうぞよくよくお目止められ、お耳止められ、お手拍子《てびょうし》ごかっさいのご用意を願《ねが》っておくことだけでございます。始《はじ》まり」
親方はゆかいな喜劇《きげき》だと言ったが、じつはだんまりの身ぶり狂言《きょうげん》にすぎなかった。それもそのはずで、立役者《たてやくしゃ》の二人まで、ジョリクールも、カピもひと言も口はきけなかったし、第三の役者のわたしもふた言とは言うことがなかった。
けれども見物に芝居《しばい》をよくわからせるために、親方は芝居の進むにつれて、かどかどを音楽入りで説明《せつめい》した。
そこでたとえば勇《いさ》ましい戦争《せんそう》の曲をひきながら、かれはジョリクール大将《たいしょう》が登場を知らせた。大将はインドの戦争でたびたび功名《こうみょう》を現《あらわ》して、いまの高い地位《ちい》にのぼったのである。これまで大将はカ
前へ
次へ
全320ページ中88ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
マロ エクトール・アンリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング