した。「カピ、それはいけません。ジョリクール、気をつけないとしかりますぞ」
これがすべてであった。しかしそれでじゅうぶんであった。
わたしを教えながらかれは言った。「なんでもけいこには犬をお手本にするがいい。犬とさるとを比べてごらん。ジョリクールはなるほどはしっこいし、ちえもあるけれども、注意もしないし、従順《じゅうじゅん》でもないのだ。かれは教えられたことはわけなく覚《おぼ》えるが、すぐそれを忘《わす》れてしまう。それにかれは言われたことをわざとしない。かえってあべこべなことをしたがる。それはこの動物の性質《せいしつ》だ。だからわたしはあれに対してはおこらない。さるは犬と同じ良心《りょうしん》を持たない。あれには義務《ぎむ》ということばの意味がわかっていない。それが犬におとるところだ。わかったかね」
「ええ」
「おまえはりこうで注意深い子だ。まあなんによらずすなおに、自分のしなければならないことをいっしょうけんめいにするのだ。それを一生|覚《おぼ》えておいで」
こういう話をしているうち、わたしは勇気《ゆうき》をふるい起こして、芝居《しばい》のけいこのあいだなによりわたしをびっく
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