に組んだ。
「カピ、あなた、ここへ来て、ぎょうぎのいいところをお目にかけてください。わたしはこの貴人《きじん》たちにいつもていねいなことばを使っています――さあ、この玉のような丸《まる》い目をしてあなたを見てござる小さいお子さんに、いまは何時だか教えてあげてください」
カピは前足をほどいて、主人のそばへ行って、ひつじの毛皮服のふところを開け、そのかくしを探《さぐ》って大きな銀時計を取り出した。かれはしばらく時計をながめて、それから二声しっかり高く、ワンワンとほえた。それから、今度は三つ小声でちょいとほえた。時間は二時四十五分であった。
「はいはい、よくできました」とヴィタリスは言った。「ありがとうございます、カピさん。それで今度は、ドルス夫人《ふじん》になわとびおどりをお願いしてもらいましょうか」
カピはまた主人のかくしを探《さぐ》って一本のつなを出し、軽くゼルビノに合図をすると、ゼルビノはすぐにかれの真向《まむ》かいに座《ざ》をしめた。カピがなわのはしをほうってやると、二ひきの犬はひどくまじめくさって、それを回し始めた。
つなの運動が規則《きそく》正しくなったとき、ドルスは輪《
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