のうでにおさえていたきみょうな動物を引き出した。それが、さっきからたびたび毛皮を下から持ち上げた動物であったのだ。だがそれは想像《そうぞう》したように、犬ではなかった。
 わたしはこのきみょうな動物を生まれて初《はじ》めて見たとき、なんと名のつけようもなかった。
 わたしはびっくりしてながめていた。
 それは金筋《きんすじ》をぬいつけた赤い服を着ていたが、うでと足はむき出しのままであった。実際《じっさい》それは人間と同じうでと足で、前足ではなかった。黒い毛むくじゃらの皮をかぶっていて、白くももも色でもなかった。にぎりこぶしぐらいの大きさの黒い頭をして、縦《たて》につまった顔をしていた。横へ向いた鼻の穴《あな》が開いていて、くちびるが黄色かった。けれどもとりわけわたしをおどろかしたのは、くちゃくちゃとくっついている二つの目で、それは鏡《かがみ》のようにぴかぴかと光った。
「いやあ、みっともないさるだな」とバルブレンがさけんだ。
 ああ、さるか。わたしはいよいよ大きな目を開いた。それではこれがさるであったのか。わたしはまださるを見たことはなかったが、話には聞いていた。じゃあこの子どものよう
前へ 次へ
全320ページ中44ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
マロ エクトール・アンリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング