「いいや、この子の使い道はそこいらが相応《そうおう》な値段《ねだん》だ」
「おまえさん、この子をなんに使おうというのだ。足といえばこのとおりしっかりしたいい足をしているし、うでといえばこのとおりりっぱないいうでをしている。いま言ったことをどこまでもくり返して言うが、この子をいったいどうしようというのだ」
そのとき老人《ろうじん》はあざけるようにバルブレンの顔を見て、それからちびちびコップを干《ほ》した。
「つまりわたしの相手《あいて》になってもらうのだ。わたしは年を取ってきたし、夜なんぞはまことにさびしくなった。くたびれたときなんぞ、子どもがそばにいてくれるといいおとぎになるのだ」
「なるほど、それにはこの子の足はじゅうぶんたっしゃだから」
「おお、それだけではだめだ。この子はまたおどりをおどって、はね回って、遠い道を歩かなければならない。つまりこの子はヴィタリス親方の一座《いちざ》の役者になるのだ」
「その一座はどこにある」
「もうご推察《すいさつ》あろうが、そのヴィタリス親方はわたしだ。さっそくここで一座をお目にかけよう」
こう言ってかれはひつじの毛皮服のふところを開けて、左
前へ
次へ
全320ページ中43ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
マロ エクトール・アンリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング