「まあつまり当たり前の子どもさね。それはそうだが、やはり町の子だよ。百姓《ひゃくしょう》仕事にはたしかに向いてはいないようだ。試《ため》しに畑をやらしてごらん、どれほど続《つづ》くかさ」
「十年は続くよ」
「なあにひと月も続《つづ》くものか」
「まあ、このとおりだ。よく見てくれ」
わたしは食卓《しょくたく》のはしの、ちょうどバルブレンと老人《ろうじん》の間にすわっていたものだから、あっちへつかれ、こっちへおされて、いいようにこづき回された。
「さあ、まずこれだけの子どもとして」と老人《ろうじん》は最後《さいご》に言った。「つまりわたしが引き受けることにしよう。もちろん買い切るのではない、ただ借《か》りるのだ。その借《か》り賃《ちん》に年に二十フラン出すことにしよう」
「たった二十フラン」
「どうして高すぎると思うよ。それも前ばらいにするからね。ほんとうの金貨《きんか》を四|枚《まい》にぎったうえに、やっかいばらいができるのだからね」と老人《ろうじん》は言った。
「だがこの子をうちに置《お》けば、孤児院《こじいん》から毎月十フランずつくれるからな」
「まあくれてもせいぜい七フランか十
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