フランだね。それはよくわかっているよ。だがその代わり食べさせなければならないからね」
「その代わり働《はたら》きもするさ」
「おまえさんがほんとにこの子が働けると思うなら、なにも追い出したがることはないだろう。ぜんたい捨《す》て子《ご》を引き取るというのは、その養育料《よういくりょう》をはらってもらうためではない、働《はたら》かせるためなのだ。それから金を取り上げこそすれ、給金《きゅうきん》なしの下男《げなん》下女《げじょ》に使うのだ。だからそれだけの役に立つものなら、おまえさんはこの子をうちに置《お》くところなのだ」
「とにかく、毎月十フランはもらえるのだから」
「だが孤児院《こじいん》で、いや、そんならこの子はおまえさんには預《あず》けない、ほかへ預けると言ったらどうします。つまりなんにもおまえさんは取れないではないか。わたしのほうにすればそこは確《たし》かだ。おまえさんの苦労《くろう》はただ金を受け取るために、手を出しさえすればいいのだ」
 老人《ろうじん》はかくしを探《さぐ》って、なめし皮の財布《さいふ》を引き出した。その中から四|枚《まい》、金貨《きんか》をつかみ出して、食卓
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