ンは続《つづ》けた。
「うでも同様だ。――まあこれでもいいが、苦しいことや、つらいことにはたえられそうもない」
「なに、たえられない。ふん、手でさわって調べてみるがいい」
老人《ろうじん》はやせこけた手で、わたしの足にさわってみながら、頭をふったり、顔をしかめたりした。
このまえ、ばくろうが来たときも、こんなふうであったことを、わたしは見て知っていた。その男もやはり牛のからだを手でさわったりつねったりしてみて、頭をふった。この牛はろくでもない牛だ、とても売り物にはならない、などと言ったが、でも牛を買って連《つ》れて行った。
この老人《ろうじん》もたぶんわたしを買って連れて行くだろう。ああバルブレンのおっかあ。バルブレンのおっかあ。
不幸にもここにはおっかあはいなかった。だれもわたしの味方になってくれる者がなかった。
わたしが思い切った子なら、なあにきのうはバルブレンも、わたしを弱い子で、手足がか細くて役に立たぬと非難《ひなん》したのではないかと言ってやるところであった。でもそんなことを言ったら、どなりつけられて、げんこをいただくに決まっているから、わたしはなにも言わなかった。
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