たり前だ」
「それはそうでないとは言わない。だが、物は正しいからといってきっとそれが通るものとはかぎらない」
「それはそうさ」
「それそのとおり。だからおまえさんが望《のぞ》んでおいでのものも、すらすらと手にはいろうとはわたしには思えないのだ」
「じゃあ孤児院《こじいん》へやってしまうだけだ。こちらで養《やしな》いたくないものを、なんでも養えという法律《ほうりつ》はないのだ」
「でもおまえさんははじめにあの子を養いますといって引き受けたのだから、そのやくそくは守らなければならない」
「ふん、おれはこの子を養《やしな》いたくないのだ。だからどのみちどこへでもやっかいばらいをするつもりでいる」
「さあ、そこで話だが、やっかいばらいをするにも、手近なしかたがあると思う」老人《ろうじん》はしばらく考えて、「おまけに少しは金にもなるしかたがある」と言った。
「そのしかたを教えてくれれば、おれは一ぱい買うよ」
「じゃあさっそく一ぱい買うさ。もう相談《そうだん》は決まったから」
「だいじょうぶかえ」
「だいじょうぶよ」
老人《ろうじん》は立ち上がって、バルブレンの向こうに席《せき》をしめた。ふしぎ
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