バルブレンと居酒屋《いざかや》の亭主《ていしゅ》は低《ひく》い声でこそこそ話をしていた。わたしのことを話しているのだということがわかった。
バルブレンはわたしをこれから村長のうちへ連《つ》れて行って、村長から孤児院《こじいん》に向かって、わたしをうちへ置《お》く代わりに養育料《よういくりょう》が請求《せいきゅう》してもらうつもりだと言った。
これだけを、やっとあの気のどくなバルブレンのおっかあが夫《おっと》に説《と》いて承諾《しょうだく》させたのであった。けれどわたしは、そうしてバルブレンがいくらかでも金がもらえれば、もうなにも心配することはないと思っていた。
その老人《ろうじん》はいつかすっかりわきで聞いていたとみえて、いきなりわたしのほうに指さしして、耳立つほどの外国なまりでバルブレンに話しかけた。
「その子どもがおまえさんのやっかい者なのかね」
「そうだよ」
「それでおまえさんは孤児院《こじいん》が養育料《よういくりょう》をしはらうと思っているのかね」
「そうとも。この子は両親がなくって、そのためにおれはずいぶん金を使わされた。お上《かみ》からいくらでもはらってもらうのは当
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