いて来るかどうか見ようとした。
 どこへいったいわたしを連《つ》れて行くつもりであろう。
 わたしは心の中でたびたびこの疑問《ぎもん》をくり返してみた。バルブレンのおっかあがいくらだいじょうぶだと目くばせして見せてくれても、わたしにはなにか一大事が起こりそうな気がしてならないので、どうしてにげ出そうかと考えた。
 わたしはわざとのろのろ歩いて、バルブレンにつかまらないようにはなれていて、いざとなればほりの中にでもとびこもうと思った。
 はじめはかれも、あとからわたしがとことこついて来るのて、安心していたらしかった。けれどもまもなく、かれはわたしの心の中を見破《みやぶ》ったらしく、いきなりわたしのうで首をとらえた。
 わたしはいやでもいっしょにくっついて歩かなければならなかった。
 そんなふうにして、わたしたちは村にはいった。すれちがう人がみんなふり返って目を丸《まる》くした。それはまるで、山犬がつなで引かれて行くていさいであった。
 わたしたちが村の居酒屋《いざかや》の前を通ると、入口に立っていた男がバルブレンに声をかけて、中にはいれと言った。バルブレンはわたしの耳を引《ひ》っ張《ぱ》
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