寝台《ねだい》にねているような気がしなかった。わたしは目が覚《さ》めるとさっそく寝台にさわったり、そこらを見回したり、いろいろ試《ため》してみた。ああ、そうだ、わたしはやはりバルブレンのおっかあのうちにいた。
バルブレンはその朝じゅう、なにもわたしに言わなかった。わたしはかれがもう孤児院《こじいん》へやる考えを捨《す》てたのだと思うようになった。きっとバルブレンのおっかあが、あくまでわたしをうちに置《お》くことに決めたのであろう。
けれどもお昼ごろになると、バルブレンがわたしに、ぼうしをかぶってついて来いと言った。
わたしは目つきで母さんに救《すく》いを求《もと》めてみた。かの女もご亭主《ていしゅ》に気がつかないようにして、いっしょに行けと目くばせした。わたしは従《したが》った。かの女は行きがけにわたしの肩《かた》をたたいて、なにも心配することはないからと知らせた。
なにも言わずにわたしはかれについて行った。
うちから村まではちょっと一時間の道であった。そのとちゅう、バルブレンはひと言もわたしに口をきかなかった。かれはびっこ引き引き歩いて行った。おりふしふり返って、わたしがつ
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