人、孤児院から来た子どもがあった。この子たちは、『孤児院の子』と呼《よ》ばれていた。首の回りに番号のはいった鉛《なまり》の札《ふだ》をぶら下げていた。ひどいみなりをして、よごれくさっていた。ほかの子たちがみんなでからかって、石をぶつけたり、迷《まよ》い犬《いぬ》を追って遊ぶように追い回したりした。迷い犬にだれも加勢《かせい》する者がないのだ。
 ああ、わたしはそういう子どものようになりたくない。首の回りに番号札を下げられたくない。わたしの歩いて行くあとから、『やいやい孤児院《こじいん》のがき、やいやい捨《す》て子《ご》』と言ってののしられたくない。
 それを考えただけでも、ぞっと寒気《さむけ》がして、歯ががたがた鳴りだす。わたしはねむることができなかった。やがてバルブレンも、また帰って来るだろう。
 でも幸せと、ずっとおそくまでかれは帰って来なかった。そのうちにわたしもとろろとねむ気《け》がさして来た。


     ヴィタリス親方の一座《いちざ》

 その晩《ばん》一晩、きっと孤児院《こじいん》へ連《つ》れて行かれたゆめばかりを見ていたにちがいない。朝早く目を開いても、自分がいつもの
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