あ、わたしたちはせっせと働《はたら》きましょう。おまえも働くのだよ」
「ええ、ええ、ぼくはしろということはなんでもきっとしますから、孤児院《こいじん》へだけはやらないでください」
「おお、おお、それはやりはしないから、その代わりすぐねむると言ってやくそくをおし。あの人が帰って来て、おまえの起きているところを見るといけないからね」
 おっかあはわたしにキッスして、かべのほうへわたしの顔を向けた。
 わたしはねむろうと思ったけれども、あんまりひどく感動させられたので、静《しず》かにねむりの国にはいることができなかった。
 じゃあ、あれほど優《やさ》しいバルブレンのおっかあは、わたしのほんとうの母さんではなかったのか。するといったいほんとうの母さんはだれだろう。いまの母さんよりもっと優しい人かしら。どうしてそんなはずがありそうもない。
 だがほんとうの父さんなら、あのバルブレンのように、こわい目でにらみつけたり、わたしにつえをふり上げたりしやしないだろうと思った……。
 あの男はわたしを孤児院《こじいん》へやろうとしている。母さんにはほんとうにそれを引き止める力があるだろうか。
 この村に二
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