しは同い年の赤んぼうを持っていたから、二人の子どもを楽に育てることができた。ねえ、そういうわけで、わたしがおまえのおっかあになったのだよ」
「まあ、おっかあ」
「ああ、ああ、それで三月《みつき》目の末《すえ》にわたしは自分の子どもを亡《な》くした。そこでわたしはいよいよおまえがかわいくなって、もう他人の子だなんという気がしなくなりました。でもジェロームは相変《あいか》わらずそれを忘《わす》れないでいて、三年目の末になっても、両親が引き取りに来ないというので、もうおまえを孤児院《こじいん》へやると言って聞かないので困《こま》ったよ。だからなぜわたしがあの人の言うとおりにしなかった、と言われていたのをお聞きだったろう」
「まあ、ぼくを孤児院《こじいん》へなんかやらないでください」とわたしはさけんで、かの女にかじりついた。
「どうぞどうぞおっかあ、後生《ごしょう》だから孤児院へやらないでください」
「いいえ、おまえ、どうしてやるものか、わたしがよくするからね。ジェロームはそんなにいけない人ではないのだよ。あの人はあんまり苦労《くろう》をたくさんして、気むずかしくなっているだけなのだからね。ま
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