から警察へ連《つ》れて行って、暖《あたた》かくしてあげてもまだ泣《な》いていた。それで今度はおなかが減《へ》っているのだろうというので、近所のおかみさんをたのんで乳《ちち》を飲ました。まあ、まったくおなかが減っていたのだよ。
 やっとおなかがいっぱいになると、みんなは炉《ろ》の前へ連れて行って、着物をぬがしてみると、なにしろきれいなうすもも色をした子どもで、りっぱな産着《うぶぎ》にくるまっていた。警部《けいぶ》さんは、こりゃありっぱなうちの子をぬすんで捨《す》てたものだと言って、その着物の細かいこと、子どもの様子などをいちいち書き留《と》めて、いつどういうふうにして拾い上げたかということまで書き入れた。それでだれか世話をする者がなければ、さしずめ孤児院《こじいん》へやらなければなるまいが、こんなりっぱなしっかりした子どもだ、これを育てるのはむずかしくはない。両親もそのうちきっと探《さが》しに来るだろう。探し当てればじゅうぶんのお礼もするだろうから、と署長《しょちょう》さんがお言いなすった。このことばにひかれて、ジェロームはわたしが引き取りましょうと言ったのだよ。ちょうどそのじぶん、わた
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