わりばんこにこんなことばをつぶやいた。初《はじ》めに親方が、つぎにはわたしが。
あの犬たちは、楽しいにつけ苦しいにつけ、わたしたちの友だちであり、道連《みちづ》れであった。そしてわたしにとっては、わたしのさびしい身の上にとっては、このうえないなぐさめであった。
わたしがしっかり見張《みは》りをしなかったことは、どんなにくやしいことだったろう。おおかみはそうすれば小屋までせめては来なかったろうに。火の光におそれて遠方に小さくなっていたであろうに。
どうにかしていっそ親方がひどくわたしをしかってくれればよかった。かれがわたしを打ってくれればよかった。
けれどかれはなにも言わなかった。わたしの顔を見ることすらしなかった。かれは火の上に首をうなだれたまま、おそらく犬がなくなって、これからどうしようか考えているようであった。
ジョリクール氏《し》
夜明けまえの予告《よこく》はちがわなかった。
日がきらきらかがやきだした。その光線は白い雪の上に落ちて、まえの晩《ばん》あれほどさびしくどんよりしていた森が、きょうは目がくらむほどのまばゆさをもってかがやき始めた。
たびたび親方はかけ物の下に手をやって、ジョリクールにさわっていたが、このあわれな小ざるはいっこうに温まってこなかった。わたしがのぞきこんでみると、かれのがたがた身ぶるいをする音が聞こえた。
かれの血管《けっかん》の中の血がこおっていたのである。
「とにかく村へ行かなければならない。さもないとジョリクールは死ぬだろう。すぐたつことにしよう」
毛布《もうふ》はよく温まっていた。それで小ざるはその中にくるまれて、親方のチョッキの下のすぐ胸《むね》に当たる所へ入れられた。わたしたちの仕度ができた。
小屋を出て行こうとして、親方はそこらを見回しながら言った。
「この小屋にはずいぶん高い宿代《やどだい》をはらった」
こう言ったかれの声はふるえた。
かれは先に立って行った。わたしはその足あとに続《つづ》いた。わたしたちが二、三|間《げん》(四〜六メートル)行くと、カピを呼《よ》んでやらなければならなかった。かわいそうな犬。かれは小屋の外に立ったまま、いつまでも鼻を、仲間《なかま》がおおかみにとられて行った場所に向けていた。
大通りへ出て十分間ほど行くと、とちゅうで馬車に会った。その御者《ぎょし
前へ
次へ
全160ページ中129ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
マロ エクトール・アンリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング