ゃ》はもう一時間ぐらいで村に出られると言った。これで元気がついたが、歩くことは困難《こんなん》でもあり苦しかった。雪がわたしのこしまでついた。
たびたびわたしは親方にジョリクールのことをたずねた。そのたんびにかれは、小ざるはまだふるえていると言った。
やっとのことでわたしたちはきれいな村の白屋根を見た。わたしたちはいつも上等な宿屋《やどや》にとまったことはなかった。たいてい行っても追い出されそうもない、同勢《どうぜい》残《のこ》らずとめてくれそうな木賃宿《きちんやど》を選んだ。
ところが今度は親方がきれいな看板《かんばん》のかかっている宿屋へはいった。ドアが開いていたので、わたしはきらきら光る赤銅《あか》のなべがかかって、そこから湯気のうまそうに上っている大きなかまどを見ることができた。ああ、そのスープが空腹《くうふく》な旅人にどんなにうまそうににおったことであろう。
親方は例《れい》のもっとも『紳士《しんし》』らしい態度《たいど》を用いて、ぼうしを頭にのせたまま、首を後ろにあお向けて、宿屋《やどや》の亭主《ていしゅ》にいいねどこと暖《あたた》かい火を求《もと》めた。初《はじ》めは宿屋の亭主もわたしたちに目をくれようともしなかった。けれども親方のもっともらしい様子がみごとにかれを圧迫《あっぱく》した。かれは女中に言いつけて、わたしたちを一間《ひとま》へ通すようにした。
「早くねどこにおはいり」と親方は女中が火をたいている最中《さいちゅう》わたし言った。わたしはびっくりしてかれの顔を見た。なぜねどこにはいるのだろう。わたしはねどこなんかにはいるよりも、すわってなにか食べたほうがよかった。
「さあ早く」
でも親方がくり返した。
服従《ふくじゅう》するよりほかにしかたがなかった。寝台《ねだい》の上には鳥の毛のふとんがあった。親方がそれをわたしのあごまで深くかけた。
「少しでも温まるようにするのだ」とかれは言った。「おまえが温まれば温まるほどいいのだ」
わたしの考えでは、ジョリクールこそわたしなんぞよりは早く温まらなければならない。わたしのほうは、いまではもうそんなに寒くはなかった。
わたしがまだ毛のふとんにくるまってあったまろうと骨《ほね》を折《お》っているとき、親方はジョリクールを丸《まる》くして、まるで蒸《む》し焼《や》きにして食べるかと思うほど火の上
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