かりもなかった。
どこかたばねたまきのかげにでもかくれているのではないかと思って、わたしたちはまた小屋へ帰って、しばらく探《さが》し回った。いく度もいく度も同じすみずみを探した。
わたしは親方の肩《かた》に上って、屋根に葺《ふ》いてあるえだたばの中を探してみた。二度も三度も呼《よ》んでみた。けれどもなんの返事もなかった。
親方はぷりぷりかんしゃくを起こしているようであった。わたしはがっかりしていた。
わたしは親方に、おおかみがかれまでも取って行ったのではないかとたずねた。
「いいや」とかれは言った。「おおかみは小屋の中までははいっては来なかっただろう。ゼルビノとドルスは外へ出たところをくわえられたかと思うが、この中までははいって来られまい。たぶんジョリクールはこわくなって、わたしたちの外に出ているあいだにどこへかかくれたにちがいない。それをわたしは心配するのだ。このひどい寒さでは、きっとかぜをひくであろう。寒さがあれにはなにより効《き》くのだから」
「じゃあどんどん探《さが》してみましょうよ」
わたしたちはまたそこらを歩き回った。けれどまるでむだであった。
「夜の明けるまで待たなければならない」と親方が言った。
「どのくらいで明けるでしょう」
「二時間か三時間だろう」
親方は両手で頭をおさえてたき火の前にすわっていた。
わたしはそれをじゃまする勇気《ゆうき》がなかった、わたしはかれのわきにつっ立って、ただときどき火の中にえだをくべるだけであった。一、二度かれは立ち上がって戸口へ行って、空をながめてはじっと耳をかたむけたが、また帰って来てすわった。
わたしはかれがそんなふうにだまって悲しそうにしていられるよりも、かまわずわたしにおこりつけてくれればいいと思った。
三時間はのろのろ過《す》ぎた。その長いといったら、とても夜がおしまいになる時がないのかと思われた。
でも星の光がいつか空からうすれかけていた。空がだんだん明るく、夜が明けかかっていた。けれども明け方に近づくに従《したが》って、寒さはいよいよひどくなった。戸口からはいって来る風が骨《ほね》までこおるようであった。
これでジョリクールを見つけたとしても、かれは生きているだろうか。
見つけ出す希望《きぼう》がほんとにあるだろうか。
きょうもまた雪が降《ふ》りださないともかぎらない。
でも
前へ
次へ
全160ページ中126ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
マロ エクトール・アンリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング