エラに見とれていました。が、相変らず、セエラが何をいっているのだか判りませんでした。セエラは、じき我にかえって、ベッキイに問いかけました。
「ベッキイ、あなたこの間、私のお話を聞いていたんでしょう。」
「聞いてました。」ベッキイはちょっとまたどぎまぎしました。「私、聞いたりしちゃアいけないと思ったんだけど、でも、あのお話、あんまり面白くって、私――聞くまいと思っても、聞かずにいられなかったの。」
「私も、あなたに聞いてもらいたかったのよ。誰だって聞きたい人に話してあげたいものでしょう? あの話のつづき聞きたくない?」
「私にも聞かして下さるって? あのお嬢様がたのように? 王子様のことや、白い人魚の子のことや、お星様の飾りをつけた髪のことや、みんな聞かして下さるのですって?」
「でも、今日はもう時間がないから駄目じゃアない? これからお掃除に来る時間を教えて下されば、私その時お部屋にいて、少しずつお話してあげるわ。かなり長くて、綺麗なお話よ。それに私、繰り返して話すたびに、何かしら新しいことを入れるのよ。」
セエラの部屋を出たベッキイは、今までの可哀そうなベッキイではなくなりました。
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