彼女のポケットには、余分にもらったお菓子がありました。いかにも満腹そうです。そして暖かそうでした。彼女のお腹を充《みた》し、身体を暖めてくれたのは、お菓子や火ばかりではありません。お菓子でも火でもなく、ベッキイを養い暖めてくれたものは、もちろんセエラでした。
 ベッキイが出て行ったあと、セエラは、テエブルの端に腰を下し、椅子の上に脚をのせ、脚に肱をついて、それに顎をのせました。
「もし、私がほんとうの宮様《プリンセス》だったら、私は人民に贈物《おくりもの》を撒《ま》きちらすことが出来るんだけどな。宮様《プリンセス》のつもりになっただけでも、皆さんのためにしてあげられることは、いろいろあるわ。たとえば、ベッキイをいい気持にしてやるということは、贈物をするようなものだわ。私は、これから人をよろこばすことは、贈物をするのと同じだというつもり[#「つもり」に傍点]になろう。そうすると、私は今、ベッキイに一つの贈物をしたばかりだということになるのね。」

      六 ダイヤモンド鉱山

 セエラがベッキイと近づきになってからしばらくの後、心を躍《おど》らすようなことが起りました。セエラ自身胸
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