も、いつか怖れを忘れ、思いきってこんなことまで問うようになりました。
「あの、そのお召ね? ――それ、お嬢様の一番いいお着物?」
「まだこんな舞蹈服《ぶとうふく》はいくらもあるけど、私はこれが好きなのよ。あなたも好き?」
 ベッキイは感嘆のあまり、しばらく言葉も出ないような風でしたが、やがてびくびくした声でいいました。
「私いつか、宮様《プリンセス》を見たことがあるの。公園の外の人混に混って見ていると、いい着物を着た人達が行く中に、一人桃色づくめの衣裳《なり》をした、もう大人になった女の方があったの。それが宮様《みやさま》だったのよ。今しがた、あなたがテエブルに腰かけていらっしゃるのを見た時、私はその女の人を思い出したのよ。お嬢様はちょうど、その宮様《プリンセス》そっくりなのだもの。」
 セエラは一人ごとのようにいいました。
「私、時々こんなことを考えたことがあるわ。私も宮様《プリンセス》になりたいなアって。宮様《プリンセス》になったら、どんな気持でしょう。きっともうじき、宮様《プリンセス》になったつもり[#「つもり」に傍点]を始めるのでしょう。」
 ベッキイは眼をお皿のようにして、セ
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