ロッティは床に転って、ひいひいいいながら、小さな肥った脚で猛烈に蹴り立てていました。アメリア嬢は真紅《まっか》になって、ロッティの上にのしかかっていました。
「まア、可哀そうね、お母ちゃんのないことも知っててよ。可哀そうにねエ――」というかと思うと、今度は調子をがらりと変えて、「黙らないと振り廻してやるぞ! そら、そら、また!この根性曲りの憎まれっ子。打《ぶ》ってやるから!」
 セエラは静かに二人のそばへ行きました。
「アメリアさん。」と、セエラは低声《こごえ》でいいました。「あのミンチン先生が、とめてみてもいいと仰しゃいましたので。」
 アメリア嬢はふり返って、
「あなたにとめられるつもり[#「つもり」に傍点]なの?」とおぼつかなさそうに喘ぎました。
「出来るかどうか、判りませんけど、まアやってみますわ。」
 アメリア嬢はほっと嘆息して、膝を立て直しました。ロッティはむくむくした脚を、またはげしく、じたばたやり出しました。
 セエラはアメリア嬢を送り出すと、しばらく吠え立てるロッティのそばに、黙って立っていました。喚き声の他には何の音もしませんでした。ロッティにとってこんな事は初めて
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