でした。涙の眼を開いて見ると、そこに立っているのはあのセエラでした。ロッティはセエラを認《みとめ》るまで、ちょっとの間泣きやんでいましたが、すぐまた泣きはじめなければなるまいと、思ったようでした。が、そこらはあまり静かだし、セエラは黙って立っているので、泣くのにも気がのりませんでした。
「わたい――お――お――おかあちゃんが――ないイ!」
「あたしだって、ないわ。」
思いがけないセエラの言葉に、ロッティはたちまちじたばたするのをやめて、寝たままセエラの方をじっと見はじめました。ロッティはまだ泣き足りない気持でしたが、やっと少し拗ね泣きが出来ただけでした。
「お母ちゃん、どこ?」
「お母様は天国へいらしったのよ。でも、きっと時々私達に逢いにいらっしゃるのだわ。私達の眼には見えないけど、あなたのお母様だって、きっとそうなのよ。お二人は今頃、私達を見ていらっしゃるかもしれないわ。お二人とも、きっとこの部屋にいらっしゃるのよ。」
ロッティはいきなりしゃんと坐って、あたりを見廻しました。彼女は美しい巻毛を持っていました。円《つぶ》らな彼女の眼は、濡れしとった忘勿草《わすれなぐさ》のようでした
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