いました。で、彼女はひどく当惑して、
「私――私めったにお父様と会うことなんかないのよ。」といいました。「お父様は年中お書斎にいらしって――何か読んでばかりいらっしゃるんですもの。」
「私は世界を十倍したよりかも、お父様の方が好き。だから、私悲しいのよ。お父様は、もう行ってしまいになったんですもの。」
セエラは頭を静かに膝の上にのせ、しばらくは身動きもしませんでした。アアミンガアドは、セエラが今にも泣き出すかと思いましたが、セエラはやはり泣きませんでした。彼女はやがて顔を上げずにいい出しました。
「私お父様に、悲しくても耐《こら》えるってお約束したの。まだ私もきっと耐え通すつもりよ。誰でも耐えなければならないのね。兵隊さんたちの我慢なんか大変なものだわ。私のお父様は軍人なのよ。戦争でもあると、お父様は喉《のど》のひりつくようなこともあるし、深傷《ふかで》を負うことだってないとはいえないでしょう。でも、お父様は一言だって、苦しいと仰しゃったことはないわ。」
アアミンガアドは、セエラを見つめるばかりでした。この少女の胸には、セエラを憬《あこが》れる気持が湧き始めていました。
ふと、セ
前へ
次へ
全250ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
バーネット フランシス・ホジソン・エリザ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング