。――アルフレッド大帝は、牛飼のおかみさんにお菓子を焼かされ、横面《よこつら》を張りとばされました。牛飼のおかみさんは、あとで自分のした事に気づいて、どんなに空恐ろしくなったでしょう。もしミンチン先生に、セエラがほんとうの宮様《みやさま》だと解ったら、先生はどんなに狼狽《あわて》るでしょう。――その時のセエラの眼付がたまらなかったので、ミンチン先生は、いきなりセエラの横面を張りとばしました。今考えていた牛飼の女のした通りのことをしたわけです。セエラは夢から醒めて、この事に気がつくと、思わず笑い出しました。
「何がおかしいんです。ほんとにずうずうしい子だね。」
セエラは、自分が宮様《プリンセス》だったということをはっきり思い出すまで、ちょっとまごまごしていました。
「考えごとをしていたものですから。」
「すぐ『御免なさい』といったらいいだろう。」
セエラは答える前に、ちょっと躊躇《ためら》いました。
「笑ったのが失礼でしたら、私あやまりますわ。でも、考えごとをしていたのは、悪いとは思えません。」
「いったい何を考えていたのだい? え? お前に、何が考えられるというのさ。」
ジェッシイはくすくす笑い出しました。それからラヴィニアと肱をつつきあいました。ミンチン先生がセエラに喰ってかかると、生徒達は皆面白がって見物するのでした。セエラは何と叱られても、少しもへこたれないばかりか、きっと何か変ったことをいい出すのです。
「私ね――」と、セエラは丁寧にいいました。「私、先生は御自分のなすってることが、何だか御存じないのだろうと、考えていたのです。」
「私のしていることが、私に解らないっていうのかい?」
「そうです。私が宮様《プリンセス》で、先生が宮様《プリンセス》の耳を打ったりなどなさったら、どんなことになるかしら――私は宮様《プリンセス》として、先生をどう処置したらいいだろうか、と思っていたところです。それから、私が宮様《プリンセス》だったら、先生は私が何をしようと、耳を打つなんてことは、なさらないだろうと思っていました。それからまた、お気がついたら、先生はどんなに驚いて、お狼狽《あわて》になるだろうと――[#「――」は底本では「―」]」
「何、何に気がついたらというんですよ。」
「私が、ほんとうの宮様《プリンセス》だということに。」
教室にいるだけの少女達の眼は、
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