させられるかもしれませんが、それとてきっと女中の着るようなひどいものでしょう。これから先、何かよい方に変化が起って、再び幸福な身分になろうとは、セエラにはどうしても思えませんでした。
 ふと、また何かを思いついたので、セエラの頬は紅くなり、眼は輝き出しました。彼女は痩せた身体をしゃんと伸し、顔を起しました。
「どんなことがあっても変らないことが、一つあるわ。いくら私が襤褸《ぼろ》や、古着を着ていても、私の心だけは、いつでもプリンセスだわ。ぴかぴかする衣裳を着て宮様《プリンセス》になっているのは容易《たやす》いけど、どんなことがあっても、見ている人がなくても、宮様《プリンセス》になりすましていることが出来れば、なお偉いと思うわ。マリイ・アントアネットは玉座を奪われ、牢に投げこまれたけど、その時になってかえって、宮中にいた時よりも、女王様らしかったっていうわ。だから、私マリイ・アントアネットが大好き。民衆がわアわア騒いでも、女王はびくともしなかったそうだから、女王は民衆よりずっと強かったのだわ。首を斬られた時にだって、民衆に勝ってたんだわ。」
 この考えは、今考えついたわけではありません。セエラはいままででも、辛い時には、いつもこの事を考えて、自分を慰めていたのでした。ミンチン先生にひどいことをいわれる時など、セエラは心の中でこういいながら、黙って先生を見返しているのでした。
「先生は、そんなことを、宮様《プリンセス》にいってるのだということを御存じないのね。私がちょっと手を上げれば、あなたを死刑にすることだって出来るのですよ。私は宮様《プリンセス》なのに、先生は愚かな、意地悪なお婆さんなのだと思えばこそ、何といわれても、赦してあげているのよ。」
 セエラは宮様《プリンセス》である以上、礼儀深くなければいけないと思いましたので、ミンチン先生はもとより、召使達が彼女にどんなひどい事をした時も、決して取り乱した様子などしませんでした。
「あの若っちょは、バッキンガムの宮殿からでも来たみてエに、いやにもったいぶってやがる。」と、料理番も笑ったほどでした。
 ラム・ダスとお猿の訪問を受けた次の朝、セエラは教室で、下の組の少女達にフランス語を教えていました。授業時間が終ると、セエラは教科書を片付けながら、御微行《ごびこう》中の皇族方がさせられたいろいろの仕事のことを考えていました
前へ 次へ
全125ページ中73ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
バーネット フランシス・ホジソン・エリザ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング