なオルガンの音と、讃美歌の合唱がながれていくのでした。芸術家の墓のうちでも、こんないい場所にこれほど立派に立っているのは少いでしょう。
 さて、パトラッシュの心配というのはこれでした。この、厳かにそびえている古びた石造建築の中に、時折ネルロの姿が消えてしまう。その暗いアーチ型の玄関の奥にネルロが吸いこまれてしまって、パトラッシュだけがぼんやり、敷石の上にとり残されるのです。
 パトラッシュは、一体どんな面白いものがあって、自分と離れたことのない仲よしをいつもいつもあの門内へさそいこんでしまうのだろうと、ふしぎでたまらないのでした。一二度、彼はそれを見きわめようとして、牛乳車をくっつけたまま、入口の石段をガラガラのぼりかけたことがありましたが、その度、黒服に銀のくさりをつけた脊《せ》の高い門番に一言の下に追いかえされてしまいました。パトラッシュは仕方なく、小さい御主人に変りがなければいいがと案じながら、じっとねそべって、ネルロが出て来るのを辛抱強く待っているのでした。
 パトラッシュはどこの村の人たちも教会へ行くことを知っています。大ぜい揃って、あの赤い風車のむかいの、古ぼけた教会堂へ出
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