いや、然し、再び、私は私の事を考える可きであった。夜中でも構わない。私はあの免職教員へ悉くあった事、之から起りそうな事を話し、愬《うった》え、懺悔しよう。神を知らぬ私は、唯、あの教員に「許して下さい。」と願って伏し倒れよう。そして、一切の始末をつけて貰わねばいけないのだ。私は気の替り易い悪人である。今正直にしていても、あしたは盗みを平気でしているかも知れない様な、そんな頼りにならぬ罪人である。
「善い事をしようとして、悪い事へ導かれる男」それが私と云う人間である。
ことによったら、妹の「復讐」をも、(卑怯からでなく、勇気と親愛とから)[#「(」「)」は、「(」「)」が二つ重なったもの]断念せねばなるまい。ああ、そして、それも善い事なのだと大勢の人が話している。
斯くて私は夜中に雨をついて免職教員を訪ね、謝罪すべき点を謝罪し、頼む可き事をすっかり頼んだ。
翌日の夜になると、教員は私の代理として、あの盗みをした処女の家の近くへ出掛けて行った。処女は約束を守って、八時になると、家から出て来、待っている教員を私と間違えて慄えた。柔和な教員は一切の事情を上手に分り好く話してやり、彼の女の心
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