を真黒にしている色々の心配と当惑を拭い去ってやった。そうすると女は一層自分の心を明瞭に見る事が出来、更に強い悔恨を発見して、新らしい涙を降らせた。
親切な教員は私の元へ戻って来て、起った事の凡てを話し、その上それらを記録に書きとどめて、私に与えた。
「聞き流すと云うのは好い事でない。貴方は此の記録を時々読み返して、自分を善くするように努めなくては……」
教員はその後、五回ばかり、例の処女と面会した。そして記録はその度に増補されたのである。
盗みをした処女に就いての記録
此処では教員が幾らか観念化して書きとどめた所の、哀れな処女の経歴を掲げさせて貰いたい。
「……私(処女自身)[#「(」「)」は、「(」「)」が二つ重なったもの]は考えて弁解致すのではありませんが、それでも之丈は申し上げたいのです。私は初めから悪い人間では御座いませんでした。誰だって、そうで御座いましょう。悪につけ、善につけ、それを段々と強くして行くためには相当の時間が必要なのは何より明らかで御座います。悪行さえ、幾らか習熟を要すると云う事は、少くとも私の場合では真実で御座いました。或る人は申します、悪行
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