のに刺戟され、そして、露店を出してセルロイドの櫛やシャボン入れや、その他の小さい道具を小売りし、儲けた利益丈をその老人と家族へ恵んでやろうと云う企画で私を喜ばした。
実際、私はその企画を実行する勇気を持つ事が出来た。ほんの宵の中丈露店を開くのではあるが、疵物なぞを安く割引して売るために、客の足は思ったよりも繁かった。そこ迄は実によく行ったのである。その先は何と云う悲惨であろう。
私は薄暗い燈火を前にして、地面の上に坐ってい乍ら、眼前に蹲踞んで、櫛を漁っている美しい若い女性を横目で見た。彼の女の挙動には強いて落ち着を見せようとするため、却って慌てているような風が窺われた。いやそれのみではない。彼の女が私の眼から隠れて、一本の櫛を盗み取り相にする所を私は不意と直覚した。勿論その時に、私が眼を正面へ向けたならば、女性は罪を犯し得なかったに相違ない。けれど意地の悪くなっている私は自然にそうする事を耐えて了った。
「待てよ。あの女は盗もうとしている。だが私の注意を恐れて、躊躇している。悪い女め! 私が何も知らないと思っているのか? 私がお前を罪に陥してやろうとして、態と見ぬふりをしているのが
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