る欲求で心を一杯にしていた。だが一体何がその結果であったろう。
 此処に又いけない支障が起って来た。私はあるアバずれな婦人患者に思いを掛けられ初めた。女の愛欲が私の心に響くと、その反応が浅間しく私を焼いた。私は恋を感じ初めた。それに伴随して残忍な気持がたえず行き来するのは一体何う云う訳であったろう。私はその年上の女が憎いように思われ、それをいじめてやろうとする欲望で一杯になって居た。私は興奮すると直ぐ残忍になった。その年上の女ばかりではない、院長の令嬢も私を大分好いているのが私の心へ響いていた。彼の女が色眼を呉れる事、肱を触れる事等が私に可笑しく思われた。けれど彼の女は未だ耐える力を失ってはいなかったらしく、又私が罪人である事や、妹が白痴であることから、私を恐れ嫌っている風でもあった。
「低能は筋を引くものだ。」彼の女が斯んな風に考えているのは私にも充分分っている。彼の女は風のない静かな夕暮なぞには妄想の深みへ入って、自分の胎内に低能な児が哺くまれている有様なぞを見て驚いたりするらしかった。彼の女は或る時私と一緒に病院の標本室へ入って見た事がある。アルコール潰になった長い男性の脛などが
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