し勝っているように考えられはしたものの、決して正当なものと云う丈の価値はなかった。
「大きい悪事よりも、小さい悪事を……」と私は云いつつ、知り合いの卵屋へ走り込んだ。私は其処で非常にまけて貰って五十銭丈青島卵を買い入れた。古くなっている為めに表面が象牙のように光沢を持って了った三十五の鶏卵を、私は悪い巧みで体中を顫わせつつ見入った。何故私はそんなにイジけた質なのだろう。
「この光沢がいけないんだ……」
 残りの三十銭は一体何の為めに費されたであろう。私は薬種屋へ行って三種の薬品を買い入れた。それらを上手に調合し、薄い溶液にしたものへ、光沢のある鶏卵を浸すと、一時間程でツヤ消しが完了した。
「ハハハハ之で宜敷い。」と私は大哲カントのように独語した。おお何と云う好い器量の卵達であろう。ラフなブロマイト印画紙のような肌は、もう近在から出る地卵とそっくりであった。
 軈て私は若い農夫のような出で立ちをした。そして父の土地から遠くさすらって、他の都市へと行った。
 郊外には主人が留守で、美しく若い夫人丈が淋しく子供に添乳なぞをしている家が多い。私はそんな家の扉口へ立つと、大きな笊の上を蔽った手拭
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