いを取り去り、丸顔の少女のような鶏卵を主婦達に見せびらかした。
「おかみさん! 地卵を買ってくんなんねえか。新らしいだよ。皆生れた日が鉛筆で印してあるだが、」と私は実直に云った。
「いやだ。いらないよ。」と若い女は答えるのが普通であった。
「でも此の上皮の工合を見て呉んろ。新らしいだよ。俺の爺さんが道楽に鶏を飼ってるんだからな。餌代丈になりゃ好いだよ。安くしとくだ。店で買えば七銭から八銭迄するだ。俺あ五銭で置いてくだ。」
夫人は何気なく起き上った。そして卵の肌へ手を触れて見た。彼の女は自分の可愛い子がもう卵を食べてもよい程に育ったのをつくづくと感ずるらしく、思いやりの深い眼で眠っている幼子の方を見やったりした。
斯うして卵は直きにかたがついて了うのであった。私は時々自分の身をツメって叫んだ。
「ああ罪だ。罪だ。あの卵の中、三分の一はもう腐敗してるだろうに……」
けれど私は何うしてもやめられなかった。それで、一日五十個以上は売らないと云う戒律を立てて、此の商売を続けて行くのであった。そして悲しい事に、こんな新らしい悪事が何でもない習慣に変じて行った。
初めが終り
ああ此
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