家業にして来た事を深く後悔する事が出来た。私は泣いて妹に抱きついたが、妹は黙って足を投げ出していた。
「お前は奉公に行けるかい? 私も之から何かの職人になるから……」と私は兄らしい情をこめて囁いた。
「犬ころしは止すの?」と無邪気な妹が尋ねた。彼の女は丁度その時十七才であったが智恵は遅れていて、読書も算術も出来ない低能児であった。それにも拘らず、彼の女の体はもはや大人並の生理状態を持っていたのである。スペイン闘牛士のように美しい私は答えた。
「犬ころし! ウンそれはもう止そう。お父さんもいやがっていたからね。けれどだね。私は時々思うのだ。世間は態とムシャクシャ腹を立てさせて、一人の人間をもうすっかり自暴自棄にさせ、終いには残忍にさせる。そして、その残忍を何かしら世間の為めに有効に使おうとする。世間は残忍をも遊ばして置かない。斯うして依怙地な犬殺しが出来る。気狂い犬が減って、噛まれる人々が少くなる。うまいやり方ではないか。」
 妹はノロく笑った。二人は父の死亡と母の遁走を一通り悲しむと、もう直ぐそれを忘れる事が出来た。いや結局此の方が好いようにさえ思われたのは何う云う訳だったであろう。

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