うな色合いの皮膚をしていた。彼の女の黒くて長い睫毛や、濡れたような暗い色の眼等は、何れも彼の女が純粋のアリア族である事を証拠立てていた。)
さて、私は彼の女を態と避けて、梯子を六七段下った。そして二人の若い異国人が之から何事を為すのか、少しばかりの興味に繋がれつゝ、眼|丈《だけ》を台の上へ表して、待ちかまえるのだった。
初めの内、二人の動作は顕著でなく、二人の言葉も途絶え勝ちであった。けれども、私の想像力は活発に動いて、自分の理解出来ぬ点迄をも、強いて理解して了った。
つまり、女は頻《しき》りに愛を訴えた。男はそれを冷い理性で疑った。女は軈《やが》て男の周囲をめぐって歩き初めた。けれど、男は眼をさえ動かさず、下を向いて黙っていた。
最後に女は胸のあたりを、縮めた指で掻きむしり、腰を柔かく左右に振って、じれた心持ちを表した。すると、男は遂に横笛を取り上げて、ほんの一節丈を吹き鳴らした。女は喜んで両手を打ち合した、腕環は揺れて、軽く快い響を立てた。
男は直ぐ横笛を女に突きつけ、吹いて見ろという意味を英語で言った。女は驚いて身を引いた。ただそれ丈の事であった。
二十分程も、尚お平
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