るに反し、ロココは近世に屬するものである。然るをルネッサンスに似たる足利時代が亦ロココにも似ると云ふは、これ甚しき矛盾であつて、論旨の歸著する所を知るに苦むと云ふ人もあるかも知れぬ。然れどもロココなるものは、或意味からして論ずれば即ち第二のルネッサンスであるから、足利時代が、此兩者に共通な點があると云ふことは、格別驚くに足らぬことである。但し斷はつて置くが足利時代はロココよりも寧ろルネッサンスに近く、近世的ではなくして、中世的と云ふべきものである。
以上の外に我足利時代の歐洲の中世史とを對比して、尚ほ數多の類似の點を發見することが出來る。海外遠征熱の勃興の如きは即ち其一である。歐洲人の新陸地發見をば或る史家は之を近世の始めとなし、他の史家は之を中世の終りとするのであるが我國に於て海外遠征の盛になつたのは實に足利時代である。成る程鎌倉時代にも宋元との交通はあつた。しかし夫は其頻繁の度に於て、冐險を試みた距離の遠近に於て、求法の僧侶以外に各種の人物が遠征した點に於て、將に貿易が一定の體裁を具備した點に於て、共に足利時代に於ける明との交通に比肩し得るものではない。足利時代の明貿易は、殊に其
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