かにし得べし。若し其科目中に輓近西洋に行はるゝ政治法律に關する諸學科を含まざるのを以て、科擧を無用なりとするあらば、これ大に愆れるものなり。裁判官、技術官、通譯官等の如き特殊の技能知識に重きを置かざるべからざる職務は之を例外とし、其他一般の文官なるものに在りては、其の候補者にとりて第一の必須條件は、高等なる常識と、明晰なる理解力と紳士たるに必須の修養とを具備するに在りて、法律規定等の記誦之に次ぐ。一八七六年に制定せられたる英國の高等文官試驗科目中に、羅馬法、英吉利法、政治學、經濟學、經濟史の外に近世語として、獨逸佛蘭西等の外國語及び文學、古典として希臘語、羅甸語、梵語、亞剌比亞[#「亞剌比亞」は底本では「亞刺比亞」]語并に理論數學、應用數學、博物學、英國史、希臘史、羅馬史、近世史、哲學及び倫理學等の掲げられあるは、頗る吾人の意を得たるものにして、理解力は暫く措き、常識と修養と共に一場の試驗を以て其優劣を判ずること難きに拘はらず、而かも之を試んとする企ては、全く之を試みざるに比すれば優ること萬々にして、此點よりして考察する時は、支那の科擧に於て經學と詩文とを以て試驗科目とせしこと却りて其
前へ 次へ
全14ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
原 勝郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング